「満腹食堂とは」
大田区、羽田空港線駅周辺を中心に栄えた下町糀谷。そこにある西糀谷商店街。
その一角に、主人公、貴子が、夫、裕一郎と営む「満腹食堂」がある。
関西から駆け落ちをした貴子の両親は、1960年、この「満腹食堂」を始める。
1967年に貴子、10年後に弟の直行が生まれるが、
やがて父も母も、病魔や過労のため若くして他界してしまう。
貴子は高校を中退し、弟直行の面倒をみながら「満腹食堂」を継ぎ、
まるで母の生き写しのように育っていった。
東京生まれの東京育ちではあるのだが、
感情が不安定になると、母親譲りの関西弁がでてしまう。
「泣いたらあかん」は、母から散々言われて育った、貴子の口癖。
西糀谷商店街では、今でもこの言葉が、
どこからともなく聞こえてくるのである。
「あらすじ」
一向に景気の回復をみない日本経済。
庶民の味方である「満腹食堂」の客たちにも、景気のいい話は一つもない。
結婚2年目を迎えた貴子は、子どもが欲しくて必死なのに、その気配もない。
そればかりか最近、夫、裕一郎に「皐月」という謎の女から電話がかかってくる。
貴子は叔父から「翔太」という若者を住み込みで働かすよう、半ば強引に押し付けられる。
おまけに同級生の羽田信金の太助にも、家出娘の面倒を頼まれ、
唯一の相談役の親友、薬屋の康子は、青年実業家に熱を上げ、骨抜き状態。
貴子のイライラは増すばかり。
華寿司の平次も、呉服屋の忠治も、不景気に頭を抱え、喘いでいる。
そんなある日、謎の女、皐月がとうとう「満腹食堂」に訪ねてくる。彼女の正体は・・
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